1日国内留学コースのスケジュールを見て、こう思われた方もいるかもしれません。

「10:30から90分間、『定着タイム』って何だろう?」

この時間は、講師がそばにいない、静かな集中の時間です。あなたは自分の課題に一人で取り組みます。

よくいただく質問があります。「せっかく1日英語漬けなのに、先生がいない時間があるんですか?」

はい。これは、学んだことを自分のものにするために、あえて設けている時間です。

脳が記憶を整理する時間が必要な理由

たとえば短い時間にたくさんの情報を詰め込むと、その場では覚えられても、すぐに忘れてしまうことがあります。脳が新しい情報を整理して、記憶として落ち着かせる時間を持てなかったからです。

英語学習も同じです。新しい文法や単語に触れ続けるばかりで、振り返って整理する時間がないと、その多くは早く抜けていってしまいます。

記憶の形成と定着

脳科学では、学習を大きく二つの段階に分けて考えます。一つめは符号化(エンコーディング)、新しいことに触れて脳が最初に取り込む段階です。二つめは定着(コンソリデーション)、取り込んだ情報を整理して、より安定した記憶として保存していく段階です。

定着というと睡眠中のものがよく知られていますが、静かな休息や刺激の少ない時間も、短期的な記憶の安定に役立つことがわかっています(Dewar et al., 2012)。

英語でいえば、新しい文法や単語に触れた直後に振り返って整理する時間をとると、あとで思い出しやすくなります。

定着タイムでは何をするの?

90分の定着タイムでは、診断で見つかった間違いの傾向を復習し、自分専用に用意した課題に取り組み、苦手だった単語のフラッシュカードを作ります。新しい情報が次々と入ってくることはなく、自分のペースで静かに進められます。

この間に脳は、新しい文法と場面のつながりを強め、単語を記憶として落ち着かせ、直された発音を自分の中で反芻していきます。静かに見えるこの時間こそ、学んだことが整理され、定着していく時間です。

なぜ90分?

『Deep Work(ディープ・ワーク)』(Newport, 2016)のような集中の研究では、60〜90分ほどのまとまった時間が、複雑な思考や深い学習に向いているとされています。

「90分が絶対」と脳科学が決めているわけではありません。ただ、このくらいの長さなら、新しいことを反芻するのに十分で、しかも疲れすぎずに集中を保てます。多くの学習現場で、実践的な目安として使われている長さです。

なぜ静かな時間が学習を補完するのか?

記憶の分散効果(spacing effect)という考え方では、学習の合間に時間を置くことで、覚えたことが定着しやすくなるとされています(Cepeda et al., 2006)。

英語を聞いたり話したりするだけでなく、その合間に自分で整理する時間をとることで、学んだ内容はより長く残りやすくなります。午前中に受け取ったことが、ただ通り過ぎずに、落ち着いて記憶になっていくのです。

この設計で目指していること

定着タイムには、はっきりとした目的があります。午前中に学んだことを整理して落ち着かせ、情報過多による疲れをやわらげ、直された表現や発音を自分の中で確かめ直す。そして何より、1日という集中的な学びを、無理なく最後まで続けられるようにするための時間です。

これは、記憶の定着や分散学習という、広く知られた学習の考え方にもとづいた設計です。

定着タイムは、学びを支える大切な一部です。静かに過ごすこの時間があるからこそ、その日の英語が身についていきます。

体験してみませんか?

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参考文献

  • Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354-380.
  • Dewar, M., Alber, J., Butler, C., Cowan, N., & Della Sala, S. (2012). Brief wakeful resting boosts new memories over the long term. Psychological Science, 23(9), 955-960.
  • Newport, C. (2016). Deep Work: Rules for Focused Success in a Distracted World. Grand Central Publishing.